第9回 獄中記
Vol.009
- 発行日:2010年03月22日
(サンプル公開 対象記事)
(前回「第8回 獄中記」はこちら)
拘置所2日目の朝は爽やかに明けた。私の呼称番号は3629番。起床のクラシック音楽が流れて、おもむろに歯磨き(まだ粉歯磨き粉)をしうがいをして顔を洗う。そして一応布団を片付けて正座して私の番が来るのを待つ。刑務官が私の独房の前に来て呼ばれたら呼称番号を言う。それで点呼は終了。程なくして食事が運ばれてくる。2日目ともなると麦飯のにおいにも慣れ旨く感じるようになる。味噌汁も熱々で美味しい。
(前回「第8回 獄中記」はこちら)
拘置所2日目の朝は爽やかに明けた。私の呼称番号は3629番。起床のクラシック音楽が流れて、おもむろに歯磨き(まだ粉歯磨き粉)をしうがいをして顔を洗う。そして一応布団を片付けて正座して私の番が来るのを待つ。刑務官が私の独房の前に来て呼ばれたら呼称番号を言う。それで点呼は終了。程なくして食事が運ばれてくる。2日目ともなると麦飯のにおいにも慣れ旨く感じるようになる。味噌汁も熱々で美味しい。
薬缶でお茶が運ばれてくる(ほうじ茶のようなもの)のでそれを備え付けの魔法瓶に移す。これで一日は持つのだ。と、今日は前日予告されていた通り裁判所への押送の日である。食事が終わって恐らく8時代にお迎えが来た(時計が無いので分からない)。約1日ちょっとぶりに外に出ることが出来る。拘置所の地下らしいところに連れて行かれ、よく街中で見かける護送車に乗り込む。通常はここに被疑者が手錠を掛けられそこに一本の縄を通して一列にまとめられ乗り込むのであるが、私はなぜか特別扱い。私の房の担当者(柔道をやっている元相撲取りみたいな人)が一緒についてきてくれる。その他数人の刑務官が一緒に乗り込む。つまり私の専用車なのだ。
拘置所から裁判所にいくまで、ちょっとした雑談も可能だ。いくばくかの質問をしたんだが、心地よい護送車の揺れのせいかいつしか眠りについていた。10数分くらいは寝ただろうか。はっと起きるとまだ着いていない。ブラインドの隙間から町並みが見える。たった一枚のガラス板越しに私がこれまで生活してきた外界と遮られている。たった数ミリの隙間が何か切なく感じた。ふと逮捕されていることが現実のものとして認識することになる。そんな感傷を抱いている間もなく護送車は東京地方裁判所に到着した。
私は地下牢のような窓の一切ない小部屋に連れて行かれた。連れて行ってくれた刑務官は人のよさそうなベテランだ。私のことを気遣ってくれたようで通常は2冊しか入らない漫画を読み終わったら何度も入れ替えてくれた。この独房の小部屋は東京拘置所と間取りは全く一緒だ。トイレの位置やドアノブ、時計が無いところも全て一緒だ。違うのは光を取り込む窓がないくらい。この部屋にずっと閉じ込められていたらちょっと気が狂いそうだ。なぜか豊臣秀吉の伝記漫画を読みながら30分ほど過ごしていると呼び出しがあった。どうやら弁護士の面会らしい。そうか裁判所でも面会できるのか。と面会室に行く途中弁護士とすれ違った。拘置所と違い仕切りが厳密ではないため面会者と直接触れ合う
空間があるのにはびっくりした。そして面会室に入った。どうも15分くらいしか時間を認められていないらしく、今日はゆっくりした話は出来ず昨日の取調べの内容を手短に話しただけで終わった。消化不良気味に地下牢のような独房に戻る。
地下牢は時間の過ぎるのが遅い。漫画を読むのが早い私は直ぐに読み終わり、ドアの小窓から刑務官が通り過ぎるのをじーっと待つ。通り過ぎるときに呼び出しのスイッチみたいなのを押す。スイッチは拘置所では電子式のランプが点灯する仕組みだが裁判所の地下牢は手押し式。つまり押したら外に木のようなもので作られた板が飛び出る仕組みになっている。そして特別に漫画を差し入れてもらう。結局この日は豊臣秀吉全巻読んでしまった。ちょっと話しているとどうやら東京拘置所の私の担当と、裁判所の刑務官は仲良しらしかった。と
2時間ほどして食事が運ばれてきた。ここでは弁当は取れないから熱々のシチューとパンだったように思う。食事のレベルは東京拘置所と同じくらいだ。すぐに食べ終えて、ただひたすら時を待つ。拘留質問をやるだけの為にわざわざ私一人を朝早くから押送して待たせるくらいなら、東京拘置所にいて時間になったら呼び出すでもいいような気がするのだが、そんな被疑者の気持ちなど配慮は当然してくれない。そこからさらに3時間ほどまっただろうか。やっと私の番になったらしく独房に呼び出しが掛かった。
(第10回に続きます)
拘置所から裁判所にいくまで、ちょっとした雑談も可能だ。いくばくかの質問をしたんだが、心地よい護送車の揺れのせいかいつしか眠りについていた。10数分くらいは寝ただろうか。はっと起きるとまだ着いていない。ブラインドの隙間から町並みが見える。たった一枚のガラス板越しに私がこれまで生活してきた外界と遮られている。たった数ミリの隙間が何か切なく感じた。ふと逮捕されていることが現実のものとして認識することになる。そんな感傷を抱いている間もなく護送車は東京地方裁判所に到着した。
私は地下牢のような窓の一切ない小部屋に連れて行かれた。連れて行ってくれた刑務官は人のよさそうなベテランだ。私のことを気遣ってくれたようで通常は2冊しか入らない漫画を読み終わったら何度も入れ替えてくれた。この独房の小部屋は東京拘置所と間取りは全く一緒だ。トイレの位置やドアノブ、時計が無いところも全て一緒だ。違うのは光を取り込む窓がないくらい。この部屋にずっと閉じ込められていたらちょっと気が狂いそうだ。なぜか豊臣秀吉の伝記漫画を読みながら30分ほど過ごしていると呼び出しがあった。どうやら弁護士の面会らしい。そうか裁判所でも面会できるのか。と面会室に行く途中弁護士とすれ違った。拘置所と違い仕切りが厳密ではないため面会者と直接触れ合う
空間があるのにはびっくりした。そして面会室に入った。どうも15分くらいしか時間を認められていないらしく、今日はゆっくりした話は出来ず昨日の取調べの内容を手短に話しただけで終わった。消化不良気味に地下牢のような独房に戻る。
地下牢は時間の過ぎるのが遅い。漫画を読むのが早い私は直ぐに読み終わり、ドアの小窓から刑務官が通り過ぎるのをじーっと待つ。通り過ぎるときに呼び出しのスイッチみたいなのを押す。スイッチは拘置所では電子式のランプが点灯する仕組みだが裁判所の地下牢は手押し式。つまり押したら外に木のようなもので作られた板が飛び出る仕組みになっている。そして特別に漫画を差し入れてもらう。結局この日は豊臣秀吉全巻読んでしまった。ちょっと話しているとどうやら東京拘置所の私の担当と、裁判所の刑務官は仲良しらしかった。と
2時間ほどして食事が運ばれてきた。ここでは弁当は取れないから熱々のシチューとパンだったように思う。食事のレベルは東京拘置所と同じくらいだ。すぐに食べ終えて、ただひたすら時を待つ。拘留質問をやるだけの為にわざわざ私一人を朝早くから押送して待たせるくらいなら、東京拘置所にいて時間になったら呼び出すでもいいような気がするのだが、そんな被疑者の気持ちなど配慮は当然してくれない。そこからさらに3時間ほどまっただろうか。やっと私の番になったらしく独房に呼び出しが掛かった。
(第10回に続きます)